前編からの続きです。
まだお読みでない方は、ぜひこちらからどうぞ。
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ビンテージ婦人雑誌の「稼ごう」広告(前編)
2023/3/18
アメリカで1935~1996年に出版されていた『The Workbasket』という雑誌があります。内容としては編み物などの手芸がメインなのですが、料理やガーデニングの記事もあるので、「手芸寄りの婦人 ...
後編では、1940~1990年代の『The Workbasket』を何冊か選び、掲載されている「稼ごう」広告の数と内容を調べました。
年代ごとの傾向を比較するためには同じ月のほうが良いので、10月号を中心に選んでいます。
時代による変遷をご覧ください。
1948年7号の「稼ごう」広告
表紙には、創刊当初からのキャッチフレーズ「Home and Needlecraft for Pleasure and Profit」が大きく印刷されています。
しかし、もともと全8ページのペラペラ冊子だった『The Workbasket』がページ数を増やし、広告の受け入れを始めたばかりの頃です。
まだ広告自体が少数で、「稼ごう」広告も全24ページに1件しかありませんでした。
種類② 作ったものを売って稼ぐ
- ビーズアクセサリー
(前編に掲載した「種類」に沿って広告を分類しています)
1955年10月号の「稼ごう」広告
表紙のキャッチフレーズの文字は少し小さくなりましたが、「稼ごう」広告は全盛期に入っていたようです。
連載コーナー「Women Who Make Cents(こつこつ稼ぐ女性たち)」もすでに始まっていました。
全64ページのところ、33件の「稼ごう」広告が見つかりました。
約1.9ページに1件の割合です。
種類① 商品を売ってマージンを稼ぐ
- 造花
- 手芸用の自動糸巻き機
- クリスマスカード
- 服や布
- クリスマスカード
- 商品いろいろ
- リボン
- クリスマスカード
- 洋服
- 商品いろいろ(ただし「主の御言葉を広めながら販売する」)
- 下着や洋服
- クリスマスカード
種類② 作ったものを売って稼ぐ
- 帽子や服
- ハーブ栽培(委託栽培)
- 洋服
- アクセサリー
- アクセサリー
- ペイントしたネクタイ
- シェルアクセサリー
種類③ 専門スキルを身につけて稼ぐ
- 文章力
- 准看護婦
- 布地の補修(かけはぎ)
- ホテル接客スキル
- 家具の布貼り
- 准看護婦
- 文章力(記者を目指す)
- モノクロ写真の彩色(オイルペイントするのだそうです)
- 准看護婦
その他
- 住所書きの内職
- 情報商材(セールスマン向け雑誌の購読)
- 内職あっせん
- 住所書きの内職
- 情報商材(飲食店の経営ノウハウ)
1963年10月号の「稼ごう」広告
キャッチフレーズは表紙から目次ページへ移動してしまいましたが、引き続き「稼ごう」広告の全盛期です。
商品を売って稼ごうという広告が増えました。
全84ページのところ、37件の「稼ごう」広告が見つかりました。
約2.3ページに1件の割合です。
種類① 商品を売ってマージンを稼ぐ
- おかし(キャンディ、トフィーなど)
- 婦人服
- クリスマスっぽいナプキン
- ラグ
- クリスマスっぽいナプキン
- リボン
- チョコレート
- 『The Workbasket』定期購読
- クリスマスカード
- メッセージカードと封筒のセット
- 教会の写真入り連絡帳
- ピーカンナッツ
- クリスマスカード
- ふきん
- 手芸用の自動糸巻き機
- 日用品いろいろ
- 芳香剤
- 日用品いろいろ
- キャンドルの型
- タッパーウェアのような容器
- プラスチック製品
- キモカワ人形(マトリョーシカの首だけみたいなやつ)
- キリスト教のカード
- クリスマスカード
- カード、ラッピング、ギフト
- 人形
種類② 作ったものを売って稼ぐ
- デコレーションケーキ
- 手織りラグ
- アクセサリー
- リメイク椅子
種類③ 専門スキルを身につけて稼ぐ
- 布地の補修(かけはぎ)
- モノクロ写真の彩色
- 帽子作り
- 簿記(帳簿係や会計士をめざす)
- 文章力(作家や記者をめざす)
その他
- 「稼ぐ方法200選」という情報商材
1973年10号の「稼ごう」広告
「Home and Needlecraft for Pleasure and Profit」のキャッチフレーズは、ついに目次からも姿を消しました。
しかし連載コーナーの「Women Who Make Cents(こつこつ稼ぐ女性たち)」は健在です。
「稼ごう」広告は激減しています。
全68ページのところ、「稼ごう」広告は11件しか見つかりませんでした。
約6.2ページに1件の割合です。
種類① 商品を売ってマージンを稼ぐ
- フルーツケーキ
- 雪景色がプリントされたプラスチックボード
- 台所ふきん
- クリスマスっぽいナプキン
種類② 作ったものを売って稼ぐ
- レシピ本(サークル内でレシピを出し合って、本にして売りましょう!という広告)
- アクセサリー
- 手作りの網を使ったさまざまな小物
- アクセサリー
- リメイク椅子
種類③ 専門スキルを身につけて稼ぐ
- フラワーアレンジメントと経営術
- 獣医師助手
「レシピ本を作って売ろう」という広告については、別記事を書いています。
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コミュニティクックブック
2023/3/22
アメリカのビンテージ婦人雑誌『Workbasket』に、お小遣い稼ぎや活動資金集めを支援する広告がたくさん載っていることを以前書きました。 今回はそんな広告の一種、「オリジナルレシピ本を作って稼ごう」 ...
1983年10号の「稼ごう」広告
連載コーナーは名前が「Making Cents(こつこつ稼ぐ)」に変わりましたが、まだ健在です。
しかし「稼ごう」広告はますます減少。
全88ページのところ、「稼ごう」広告はたったの4件しか見つかりませんでした。
22ページに1件の割合です。
広告の種類は、自分で作ったものを売って稼ぐという、手芸雑誌らしいものだけになっていました。
種類② 作ったものを売って稼ぐ
- 手織りのランチョンマット(バザーに出すと「They sell like hot cakes(ホットケーキみたいに売れる)」そうです)
- リメイク椅子
- レシピ本
- 木製玩具(捨てるような木材で作る)
1990年10号の「稼ごう」広告
誌面がカラー化し、大幅リニューアルされています。
都会的で、若々しい雰囲気になりました。
ついに連載コーナー「Making Cents」がなくなってしまいました。
「稼ごう」広告は、なんと2件です。
それ以外の広告も、以前は便秘薬、尿漏れ対策品、痩身器具、介護用品、下着など生々しいものがあったのですが、それらも姿を消しています。
上品な雑誌になりました。
種類② 作ったものを売って稼ぐ
- レシピ本
- レシピ本
お読みいただき、ありがとうございました!
1950~60年代は「稼ごう」広告がとても多く、洗い出していて気が遠くなりそうでした。
しかし、この時代の「私も稼ごう!」「私だって稼げる!」という熱気を感じられて、楽しかったです。